平成25年度「第12回ちゅうでん教育大賞」の入賞者が決定し、10月20日(日)名古屋市内のホテルにて、表彰式を開催しました。
選考委員長(玉川大学教授・教育学部長) 寺本 潔
本年度は、いくつか質の高い教育論文の応募が目立った。ブックトークやナラティブアプローチ、ポスターセッションなど、教育界に普及しつつある最新の教育方法が上手に活用され、児童生徒による息の長い追究が見られた。その背景には、指導者や学校側の心温まる教育への熱意と学びの意味に対する内省が不可欠で、それらは見事な指導の結果となって結実していた。論文の書き方としても実証的で論理的な論文がいくつか見られた点は大変喜ばしい。また、対話と振り返り、科学的探究心、自己肯定感や豊かな言語活動、郷土の自然や歴史への愛情形成など、現代日本の教育界が追い求めてきた課題の解決や実現を論文から垣間見ることができたことは嬉しい。このことは、本財団が目指している目的と合致し、今後の一層の研究の深まりと広がりが期待される。
教科・領域別では国語や理科、社会、総合、書写などからの応募が本年度は目立っているが、算数や図工、音楽、体育、家庭、特別支援などからの応募が少ないので、より多くの教科・領域からの応募が増加すればと願いたい。また、環境教育や国際理解、ICTによる教育、ESDなど現代的な課題からの一層の応募も期待したい。
教育界は日進月歩で進化している。時代の要請に応えつつ、オーソドックスなテーマを地道に追い求める努力も素晴らしいものがある。児童生徒の教育による変容こそ、いつの時代にも大切なことなのである。なお、財団の名称の影響もあり、例年、愛知県を中心とした東海地方の学校からの応募が多い傾向にあるが、本財団の教育大賞は全国からの応募を受け付けている。奮って全国各地からの応募をお願いしたい。
【よりよい論文作成に向けて】
本財団の「教育大賞」で求めている論文は、授業実践を中心にしつつ、リアルな子どもの学びを深めた教育論文です。たとえ優れた教育実践でも、その論文としての書き方や表現方法が不十分なため、予備審査の段階で選考に漏れてしまうことがあります。そこで、応募にあたって次の3点を特に留意して頂きたい。
- ①
- 学校研究として行った全体的なテーマをそのまま題目にしたり、単に実践を記録的にまとめるのではなく、単体の論文として題目や論旨・構成を工夫してほしい。
- ②
- 実践した教育活動をすべて書き出すのではなく、テーマに即して最も主張したい内容を絞り込み、学校や学級ならではの独自性を描き出してほしい。
- ③
- 提出する論文の文字数・ページ数(写真、図表などのスペースも含まれることに注意)や添付資料の規定を厳守してほしい。また、子ども達のノート等を使う場合はできるだけクリアな印字や写真で作成してほしい。
以上の留意点を念頭に立派な教育論文が全国から応募されることを願っています。
応募総数:52件 表彰数:教育大賞1件、教育優秀賞2件、教育奨励賞10件
(都道府県コード順、敬称略)
受賞内容 | 都道府県 | 学校名 | 研究題目 | 申込者 |
---|---|---|---|---|
教育大賞 | 愛知県 | 刈谷市立富士松北小学校 | 作者を見つめ、豊かに表現する児童の育成 ~5年国語「賢治さんのメッセージを語ろう」の実践~ |
吉牟田 幸子 |
教育優秀賞 | 愛知県 | 西尾市立西尾小学校 | 地域の自然を愛し、地域を大切に思う子どもの育成 ~二の沢川とふれあう総合的な学習の時間での実践を通して~ |
神取 順子/岸本 寛 倉知 雅美/岩瀬 倫子 |
教育優秀賞 | 香川県 | 香川大学教育学部附属坂出中学校 | 対話と振り返りの反復で、思考力・表現力の向上を図る国語科授業の創造 ~討論による解釈の交流と、評論文による内省の相乗効果の検証~ |
小林 理昭 |
教育奨励賞 | 宮城県 | 大河原町立大河原小学校 | 正しく読み、読みを深める児童の育成を目指して~説明的な文章の指導を通して~ | 堀 努 |
教育奨励賞 | 福島県 | 郡山市立郡山第四中学校 | 主体性を育てる、実感、納得を伴う理科の学びを目指して | 児玉 剛明 |
教育奨励賞 | 茨城県 | 日立市立宮田小学校 | 交流学級における学ぶ喜びを味わえる学習指導の在り方 ~第5学年のソフトバレーボールの伝え合い学び合える場の設定を通して~ |
鈴木 昭夫 |
教育奨励賞 | 群馬県 | 安中市立松井田東中学校 | 英語のプレゼンテーション活動~自己表現活動の橋渡し活動として~ | 福田 昇 |
教育奨励賞 | 長野県 | 飯田市立松尾小学校 | 社会科の授業を見つめ直し、新たな方向への実践 ~A児とT児の2年間の学習の歩みから~ |
野神 和之 |
教育奨励賞 | 愛知県 | 新城市立鳳来中部小学校 | 郷土の歴史を大切に思い、本気で伝えようとする子の育成 ~ふるさと歴史ガイドの取り組みより~ |
原田 健一 |
教育奨励賞 | 愛知県 | 碧南市立大浜小学校 | ディスレクシアの児童に漢字の読み能力を向上させる「ことばの教室」での取り組み ~通常学級での授業適応と二次障害の解消を目指して~ |
長田 洋一 |
教育奨励賞 | 愛知県 | 江南市立草井小学校 | 「楽しい、できる」自己肯定感の高い児童の育成を目指した書写指導 | 石田 竹司 |
教育奨励賞 | 熊本県 | 熊本市立出水小学校 | 探究する力をはぐくむ総合「すこやかサミット」の創造 ~「見通し・振り返り」学習活動の充実を通して~(前任校熊本市立城東小学校での実践) |
金井 義明 |
教育奨励賞 | 鹿児島県 | 日置市立伊集院北中学校 | 科学的探究心を高める理科学習~主体的な探究活動の充実を目指して~ | 牟田 典丘 |
各賞の副賞は教育大賞50万円、教育優秀賞20万円、教育奨励賞5万円
以上