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■2021年度「第20回ちゅうでん教育大賞」 

選考総評

選考委員長(玉川大学教育学部教授) 寺本 潔

 本年は、新潟県上越市の教諭による「物語る力」を育成する国語科指導の論文が教育大賞を獲得した。題材は有名な「ごんぎつね」である。単に児童文学の読解にとどまらず、物語創作を通して現実の再構成や自他認識の変容を量的、質的両面からも分析し、成果と課題も明らかにした優れた授業実践に仕上がっている。加えてキーアイテムや最後の一文などの物語創作の手順も学ばせており、いわば創造的な国語科実践と高く評価できる。多くの先行研究も参照されており、研究論文としての完成度も高い。
 続く優秀賞にも同じ新潟県長岡市の教諭による論文が選ばれた。この実践論文は、生活科の内容でICT活用による話し合いの活性化や授業への全員の参加度の向上に寄与した実践となっている。学校田ミラクルランドを軸にした体験的な学びが共起ネットワークにより児童の認識が可視化されている。第2学年の生活科に親和性の高いJSLカリキュラムが内包され、児童の学習成果がクラスでの話し合いの分析と個人の記述分析、日本語指導が必要な児童の文字数・文章構成の変容からも検証されている。もう一本の優秀賞には、愛知県江南市の教諭による通級指導事例を扱った実践論文が選ばれた。音声付教科書の効果を中心にA児の発達習熟が丁寧に記述され、保護者との連携も十分とれた実践となっている。「支援前診断から得られた読みの困難さ」に対する音声補助の有効性が活かされ優れた事例に仕上がっている。
 惜しくも奨励賞に選ばれたそのほかの論文は、「物語の考え方のモンスター」というラベルの活用を試みた個別最適な国語科の学び、メッキという視覚的効果に着目した水溶液とイオンを扱った中学理科指導やコロナ禍で疲弊している飲食店ののぼり旗のデザインを工夫したユニークな中学美術科実践、ドローン画像とVR技術を活かした河川防災教育のオリジナルな教材開発と実践、地上絵や紙飛行機等を題材にした算数学習、幼小連携に焦点が当てられた生活科実践、重度知的障害のある生徒へのICT(タブレットと授業支援アプリ)の効果的な指導、道徳を題材にした教員による丁寧なリフレクション指導、シャコガイの育成活動を通した地元にある海洋センターとの連携、海外日本人学校による在外日本企業との協力により実現できた職場体験・キャリア教育を扱った論文等、計10本が選出された。いずれも、独創的な着眼点と優れた実践力が表れた教育論文であった。

 

選考委員からのアドバイス

【よりよい論文作成に向けて】

本財団の「教育大賞」で求めている論文は、授業実践を中心にしつつ、リアルな子どもの学びを深めた教育論文です。たとえ優れた教育実践でも、その論文としての書き方や表現方法が不十分なため、予備審査の段階で選考に漏れてしまうことがあります。そこで、応募にあたって次の4点を特に留意して作成ください。

学校研究として行った全体的なテーマをそのまま題目にしたり、単に実践を記録的にまとめるのではなく、単体の論文として題目や論旨・構成を工夫する。
実践した教育活動をすべて書き出すのではなく、テーマに即して最も主張したい内容を絞り込み、学校や学級ならではの独自性を描き出す。
提出する論文の文字数・ページ数(写真、図表などのスペースも含まれることに注意)や添付資料の規定を厳守する。また、子ども達のノート等を使う場合はできるだけクリアな印字や写真で作成する。
参考、引用文献がある場合は、論文の最後に必ず明記する。

以上の留意点を念頭に立派な教育論文が全国から応募されることを願っています。

入賞者一覧

応募総数:52件 表彰数:教育大賞1件、教育優秀賞2件、教育奨励賞10件

(都道府県コード順、敬称略)

受賞内容 都道府県 学校名 研究題目 申込者
教育大賞 新潟県 上越市立南川小学校 文学を読む意義としての「物語る力」の育成 ~文学を読み、物語を創作する1年間の学習を通した自己形成~ 小川 高広
教育優秀賞 新潟県 長岡市立表町小学校 「学校でしかできない活動」における日本語指導が必要な児童への言語能力育成の試み ~ 言語と経験を行き来するJSLカリキュラムを埋め込んだ生活科実践を通して~ 水谷 徹平
教育優秀賞 愛知県 江南市立古知野南小学校 通級による指導を契機とした合理的配慮の提供の広がり ~ 得意な力を活用した支援による、児童の変容を通して~ 前田 恵理
教育奨励賞 新潟県 燕市立燕南小学校 主体的に学ぶ児童を育成するための「物語の学び方の工夫」と「5つの自由」 ~ 6年生国語「やまなし」の学習を通して~ 山口 哲史
教育奨励賞 愛知県 刈谷市立富士松中学校 問題解決のため意欲的に思考に取り組み、科学的事象に対して理解を深める子どもの育成 ~ 3年理科「めっきで学ぶ水溶液とイオン」の実践を通して~ 永野 英樹
教育奨励賞 愛知県 刈谷市立依佐美中学校 多様な見方や感じ方で対象を捉え、よりよい表現を主体的に追求する生徒の育成 ~ 美術科中学1年生 「コロナ禍の飲食業界をデザインの力で盛り上げよう!」の実践を通して~ 三浦 英生
中村 僚志
教育奨励賞 三重県 三重大学教育学部附属小学校 ドローン映像とVR技術を活用した河川防災教育プログラムの開発と実践 ~ 近年の豪雨災害から考える雲出川の治水~ 前田 昌志
教育奨励賞 兵庫県 神戸大学附属小学校 算数・数学の問題発見・解決の過程に基づく算数科単元学習 ~ 主体的・対話的で深い学びの実現をめざして~ 赤川 峰大
教育奨励賞 兵庫県 神戸大学附属小学校 幼小の教員が共につくる接続期カリキュラムとその実践 ~ 1年生単元「はるをみつけよう」を通して~ 田淵 知紗
教育奨励賞 熊本県 熊本大学教育学部附属特別支援学校 重度知的障害のある生徒の深い学びにつなげる授業実践 ~ ICTを活用した学習の振り返りの促進~ 多田 肇
教育奨励賞 沖縄県 久米島町立久米島小学校 互いに伝え合い、深い学びを追究する子どもの育成 ~「特別の教科 道徳」における、よりよく考え対話する授業を通して~ 眞榮城 善之介
教育奨励賞 沖縄県 石垣市立崎枝小中学校 石垣島の持続可能な未来を創る子どもの育成
シャコガイの育成活動を通した環境教育の推進
林 達也
教育奨励賞 ジャカルタ日本人学校 ICTで新しい職場体験学習を創造する ~ 生徒の問題解決能力を育成する「PBL型オンライン職場体験学習」の取り組みから~ 宮本 一輝

各賞の副賞は教育大賞50万円、教育優秀賞20万円、教育奨励賞5万円

以上