1. トップページ > 
  2. ちゅうでん教育大賞 > 
  3. 「第22回ちゅうでん教育大賞」入賞結果

■2023年度「第22回ちゅうでん教育大賞」 

選考総評

選考委員長 寺本潔(東京成徳大学特任教授・玉川大学名誉教授)

 コロナ禍の一定の収束に伴い、本年は実証的で様々な指導の工夫が加えられた教育実践論文が多数提出された。その中で第1次審査を通過した計19本の論文が最終審査にかけられた。教育大賞に選ばれた論文は武蔵村山市立第十小学校で実践された「『食品ロス』問題を入り口とした『まちづくり学習』への挑戦」である。入り口は給食の食べ残し問題への着目であり、しばしば見られる手法であるが、食品ロス問題⇒規格外野菜・給食ロス削減⇒SDGsな店舗の取組み調べ⇒広報活動へと学びの展開が見事である。論文としても世界の食品廃棄問題や武蔵村山市のごみ排出量及び市内の公立小学校内での自校の残食率を適切に押さえ、課題解決に向けての授業デザインが明確化できている。規格外野菜の販売に加え、フードドライブの取り組みにも挑戦し広報活動の重要性を国語の話し合い活動の機会で設定できた点もこの実践が広がりを有した背景であろう。ショッピングモール内の7店舗へのインタビューやデジタルで取材の成果ポスターを作成した点も小学生としては素晴らしい。SDGsというテーマが、単に開発目標ロゴマークのタグ付けに終始しがちな傾向を脱し、食品ロス問題を入り口として「まちづくり学習」にまで高めた点で全国のモデルともなる実践と言えよう。
 優秀賞には、次の二本が選出された。上越教育大学附属中学校による「オンラインによる読みの交流における学習者の学びの姿―宮沢賢治と小川未明を校外の他者と協働的に読む実践研究―」と三重大学教育学部附属小学校による「ICTを活用した小学校音楽科の音楽づくりの授業実践―個別最適な学びと協働的な学びの一体的な学びの充実―」の二本である。前者は、宮沢賢治と小川未明の文学を題材にメッセージ性を観点に考え合っている。また、ビデオ通信アプリによる遠隔地にある中学校同士の交流学習も質が高い。パフォーマンス課題も設定され、よく検討された教育実践に仕上がっている。参考文献も多数渉猟されており、執筆者の研鑽が垣間見られる。完成度の高い国語実践である。
 後者は、ICTを活用した丁寧な音楽科実践である。和音の聞き取りや進行をテーマとしていて実践にユニークさが感じられる。ICTを活用し自分なりに旋律をつくっていく姿は旋律づくりとプログラミングの学習が融合しており新規性を感じた。自分たちの歌声で和音を奏でることにも挑戦できている。音楽科実践論文の応募自体が少ない中で高い水準の論文として評価できる。なお、これら上位3本の論文に関しては審査委員の一致した高い評価となり、選考は円滑に進んだことを付記しておきたい。惜しくも奨励賞に輝いた10本の論文も地域への関わりや日常生活に活用できる資質・能力、豊かな学びにつながる教材の開発、ICT活用による遠隔地同士の交流等が工夫され優れた内容の論文であった。論文としての構成立てや参考文献欄の記載も適切なものが多かったものの、応募規定枚数に著しい過不足を生じさせている論文があったのは残念であった。応募に当たり、今一度点検をお願いしたい。

 

選考委員からのアドバイス

【よりよい論文作成に向けて】

本財団の「教育大賞」で求めている論文は、授業実践を中心にしつつ、リアルな子どもの学びを深めた教育論文です。たとえ優れた教育実践でも、その論文としての書き方や表現方法が不十分なため、予備審査の段階で選考に漏れてしまうことがあります。そこで、応募にあたって次の4点を特に留意して作成ください。

学校研究として行った全体的なテーマをそのまま題目にしたり、単に実践を記録的にまとめるのではなく、単体の論文として題目や論旨・構成を工夫する。
実践した教育活動をすべて書き出すのではなく、テーマに即して最も主張したい内容を絞り込み、学校や学級ならではの独自性を描き出す。
提出する論文の文字数・ページ数(写真、図表などのスペースも含まれることに注意)や添付資料の規定を厳守する。また、子ども達のノート等を使う場合はできるだけクリアな印字や写真で作成する。
参考、引用文献がある場合は、論文の最後に必ず明記する。

以上の留意点を念頭に立派な教育論文が全国から応募されることを願っています。

入賞者一覧

応募総数:66件 表彰数:教育大賞1件、教育優秀賞2件、教育奨励賞10件

(都道府県コード順、敬称略)

 
受賞内容 都道府県 学校名 研究題目 申込者
教育大賞 東京都 武蔵村山市立第十小学校 「食品ロス」 問題を入り口とした 「まちづくり学習」 への挑戦
~公立小学校の6年生が地域の産・官・学をつなぐ~
今井 一馬
比留間 雄大
久保田 萌海
教育優秀賞 新潟県 上越教育大学附属中学校 オンラインによる読みの交流における学習者の学びの姿
-宮沢賢治と小川未明を校外の他者と協働的に読む実践研究-
岩舩 尚貴
教育優秀賞 三重県 三重大学教育学部附属小学校 ICTを活用した小学校音楽科の音楽づくりの授業実践
-個別最適な学びと協働的な学びの一体的な学びの充実-
野口 智世
教育奨励賞 茨城県 笠間市立友部第二小学校 笠間のステキに興味・関心をもち、郷土を愛する心を育む総合的な学習の時間の在り方~笠間郷土かるたの実践を通して~
(前任校:笠間市立友部第二小学校での実践)
三澤 秀生
教育奨励賞 富山県 南砺市立福光中部小学校 日常生活に活用できる資質・能力の育成を目指した個別最適な学びの実現 ―子供が「自ら学ぶ」学習指導を推進した「自啓教育」の実践を通して― 佐々木 暁
教育奨励賞 長野県 松本市立安曇小学校 377km 上高地から「大河の一滴」を追う子ども達
~信濃川源流にある小さな学校の2年間に渡る挑戦~
横山 享司
教育奨励賞 京都府 城陽市立北城陽中学校 地図アプリを活用しながら歴史史料を読み解く
~百姓の実生活を歴史史料をもとにICTを活用して多面的に分析する授業~
三浦 清和
教育奨励賞 兵庫県 芦屋市立打出浜小学校 打出浜小学校における「震災をわすれない」とりくみの構築 永田 守
教育奨励賞 奈良県 大和高田市立浮孔西小学校 「自分なりのスキル」を身に付けさせるためのソーシャルスキル指導の一実践-通級指導教室における個別学習とグループ学習の場面に着目して- 安里 健志
教育奨励賞 岡山県 岡山市立芳明小学校 誰とでも楽しめる!共生の意識を高めるネット型教材の実践 中安 翼
教育奨励賞 岡山県 学校法人就実学園 就実中学校 豊かな創造力と表現力を育む「新聞詩」の授業の実践 木多 功彦
教育奨励賞 広島県 府中町立府中小学校 児童が学びをコントロールしながら読みを深めることを通して自ら学ぶ意欲を高める~UDLガイドラインに基づく授業デザインを通して~ 友田 真
教育奨励賞 鹿児島県 十島村立宝島小学校 生き生きと楽しく学び、自ら運動に取り組む児童の育成
~家庭・学校・地域が一体となった取組を通して~
志戸岡 直希

各賞の副賞は教育大賞50万円、教育優秀賞20万円、教育奨励賞5万円

以上